基礎理論男性医療とは#ホルモンの効果

男の見た目、男の寿命、男の魅力の源!
男の人生に深く関わるテストステロン

近年、男性ホルモンについての研究が進んでいます。男性ホルモンは男性の全身の機能と関わり、また、男性の生き方やふるまいにも影響を与えています。男性ホルモンの代表格であるテストステロンの働きについて知っておきましょう。

男性ホルモン=性機能だけじゃない!
アンチエイジングやメタボ予防にも

男性ホルモンの働きというと、男性を「精力絶倫」にしたり、「筋骨隆々」にするもの、というイメージがあるかもしれません。確かに、男性ホルモンには性欲や性機能を維持したり、骨や筋肉を大きくする働き、造血や皮脂分泌、ひげなど体毛の発育を促すなどの働きがあり、男らしい外見や特質を決める働きをしています。

しかし、それだけではありません。近年、男性ホルモンの代表格であるテストステロン には、さまざまな働きがあることがわかってきました。

人間の体は、加齢により血管、筋肉、神経のしなやかさが失われます。これは主に活性酸素による酸化が原因ですが、血管を柔らかくして拡張する作用のある一酸化酸化窒素(NO)の減少も影響しています。テストステロンにはNOの産生に関与し、動脈硬化を予防する働きがあると考えられています。

また、テストステロン値が低い人にテストステロンを薬として投与すると、年齢を問わず、内臓脂肪が減って筋肉がつくることがわかりました。

つまり、テストステロンはアンチエイジングやメタボリックシンドローム、さらに、メタボリックシンドロームが進行して発症する糖尿病や脳卒中、心疾患など予防する働きがあります。

世界のさまざまな地域で行われた健康調査によると、テストステロン値が最も高いグループの人は、最も低いグループの人と比較して、脳梗塞や心筋梗塞など血管系の重大疾患にかかる割合が5割低く、また、がんにかかる割合も3割低いことがわかりました。

こうした重大疾患にかかる確率が下がれば、当然寿命も延びます。そういった意味で、テストステロンは「長寿のホルモン」といえます。

認知機能の低下を抑えたり
ネガティブな感情を抑える働きも

テストステロンは主に精巣(睾丸)で作られますが、海馬でも産生されていて、情報伝達に関わる神経伝達物質の接点であるシナプスの増加を促し、記憶力の向上に関与します。そのため、テストステロンが少ないと認知症を発症するリスクが高まります。
 
また、テストステロンは喜怒哀楽などの情感を司る扁桃体の働きにも関与しています。扁桃体にはこれまでの人生で経験した記憶が保存されている部位ですが、テストステロンには恐怖や嫌なことなどの記憶にふたをする働きがあるのです。ですから、テストステロンが減ると、ネガティブな感情が湧き、不安症状やうつ症状が出やすくなります。

テストステロン値が高いと、いい意味で「鈍感力」が働き、物事に動じなくなったり、大胆な行動ができます。ストレス社会を行く抜くためには、この「鈍感力」は必要な要素です。

テストステロンは
「冒険」「社会性」「競争」のホルモン

 テストステロンは男性の生き方やふるまいにも影響を与えます。これは、狩猟文化と関係していると考えられています。

太古の昔、男性の大切な役割は狩りをすることでした。獲物を見つけて仕留めるためには、「判断力」や、リスクをとってもチャレンジする「冒険心」が欠かせません。また、狩りは共同作業なので、仲間を大切にする「社会性」が必要です。そこには、勝ち負けや順位にこだわる「競争心」や、自分のものや場所にこだわる「縄張り意識」も関係します。

また、獲物を分け与えるときには「公平性」も必要です。テストステロン値が高い人は、自分の不利益を顧みることなく、仲間や周囲のために努力し、犠牲になる気持ちが強いといわれています。

テストステロンは、「冒険」「社会性」「競争」のホルモンと整理することができます。そして、公正性、大義といったこともテストステロンと関わっているため、いわゆる「男らしさ」や「男の魅力」といったことはテストステロンに負うところが大きいのです。